此方は十六夜の蝶。
「意地の悪い女性はお嫌いですよ、緋古那さんは」
「あたしは愛で彼に選ばれているから、いいのよ」
「……愛…?」
思わず反応してしまったのは、私。
愛と言った、紛れもなく彼女は。
私が欲しいものだ。
彼から欲しいと願ってしまっているもの。
つづけて風見姫さんは、手のひらで転がすように言う。
「この場所で郎子に選ばれる法則、教えてあげましょうか」
「おっ、教えてください…!」
「…ふふ。子供ね」
わずかでも差し出されれば、躊躇うことなく受け取る。
そんな私に負けるなどと毛頭思ってもいないから、風見姫さんは余裕綽々な顔をしているのだろう。
子供……。
その通りだ。
そうだ、私は子供なんだ。
はやく大人になりたいから、大人にしてもらいたかった。
だから知りたかった。
彼に選ばれる法則というものを。