此方は十六夜の蝶。
金を出されたならどんな女だろうと、抱く。
余計相手が名のある娘なら、尚更。
言ってしまえばそれが俺の仕事。
「でも、少しだけ緋古那さんが羨ましくも思いました」
羨ましい?
俺の立場を羨ましがるだなんて、そんなの俺からすれば侮辱でしかない。
けれど翔藍は心から言っていたから、俺は言葉を待った。
「あんなにもひたむきに愛されていて」
ほんと、俺には勿体ないくらいだ。
純粋すぎて怖くなる。
綺麗すぎて恐ろしい。
水月ことなんかまったく見なくなったから、彼女は俺の正体に気づいているのだろう。
接吻はするんじゃなかった。
あんなにも女になってしまうだなんて、予想外だったんだよ。
「驚いた。おまえがウルではなく風見姫を選ぶとは」
「……水月」
こいつはどうして俺が落ち込んでいると察してくるんだろう。
たまたまか、狙っているのか。
俺よりは器用な奴だから、ずるいよなあ。