此方は十六夜の蝶。
「だって、ああでもしないと本当に抱いてしまいそうだったからさ」
「……駄目なのか」
「だめだよ。俺が、離れられなくなる」
そろそろだ。
もうそろそろだって、思ってる。
好き勝手しているのは俺だし、ウルをこの世界に引き込んでしまったのも俺。
頃合いが来たならまた離さなくちゃと分かっていながらも、彼女の純粋さに甘えてしまったんだ俺は。
結局、苦しくなるのは自分だってのにね。
「たまに考えるよ。もしウルが莫大な金を持って、俺を身請けると言ってきたとしたなら…」
そんなことあるはずがないんだけれど。
夢くらいは見たっていいだろう。
叶わないから夢なんだ。
「……したなら?」
「俺はね、きっと、断るを選ぶのさ」
「なぜだ」
納得いかなかったんだろう。
反論でもあったんだろう。
水月─八尋─がすぐに聞き返してきたということは。