此方は十六夜の蝶。
「頼むから泣くなってウル…、ごめん」
「ちがう、鷹はなんにも悪くない、悪くないのに…っ、もうこんな自分、やだ…っ」
「あっ、そうだ。ほらこれ、おまえの宝物のトラちゃんだぞ。心配してんぞ」
「っ、うぅ…っ、ひどいぃぃ…っ」
「は!?なんで!?悪かった悪かった…!もう見せねえから!」
「見せないのもだめぇ…っ」
「意味わかんねーっ!わかった見せるから泣くなって、なっ?」
いつも目に入るたびに涙が込み上げてくる。
だとしても捨てようだなんて絶対に思わなくて、私はこの先もトラちゃんだけは大切にして生きていくんだろう。
「…明日はいっしょに散歩でもしよーぜ。ちょっと遅れちまったけど花見な」
やっぱり私のほうが妹だね。
お姉ちゃんのふりなんか、できそうにない。
うなずいて、眠った。