此方は十六夜の蝶。
「私どもの全員も、羽留姫さまのことは心の底から……大切に思っておりました」
この城に使える家来たちはみんな、私の胸の葛藤など見えている。
だったらどうして。
そう思ってしまうよ、やっぱり。
「ウル、……オレさ、」
そのとき、私に安心をいちばん与えてくれたのは鷹だった。
「もしおまえが今日、父上様に会いたくねえって言うなら……このままオレも一緒に帰るよ」
「…え、」
「いいと思うんだよ、それでも。無理に会わせようとか、ここまで来たのにとか、そんなん思ってもねーし言わねえ。
そんでさ、いつか会ってみたいなって思ったときにでも……また一緒に来よーぜ」
それくらい許してくれるだろ、父親なんだから───と。
ここまで鷹を頼り甲斐があると思ったことは初めてだった。
お姉さんに会って、話して、彼のなかでも大きく変わったものがあったんだ。
あんなに家族の話をするの、嫌いだったのにね。