此方は十六夜の蝶。
「こ、こいつは昔から怖がりで…!小心者でっ、でもすげえ優しくて良いヤツで…!だから決して無礼を働いてるわけではなくて……!」
「……ふむ。私の娘で違いない」
緊張が迸る。
つぎは何を言ってくるんだろうと、なにをしてくるんだろうと、周りの誰もが注目していた。
「ほれほれ羽留ちゃんや、おまえが好きだったでんでん太鼓だぞ~」
「……………」
なにしてるんだろう、この人…。
懐からでんでん太鼓を取り出したかと思えば、鷹に隠れる私の前に見せてくる。
そうして誘き寄せようとしているのだろうか。
目尻は垂れ下がり、頬もとろけて、骨格は上がって。
つまりはすっごくデレデレな顔をしている……。
「………慶勝様、姫さまはもう16歳でございます。赤子ではありませぬぞ」
コソリと、側近のひとりが耳打ち。
「……そうだったな」と言って、彼はゴホンと咳払いをした。