此方は十六夜の蝶。
「本当に……、苦労をかけて申し訳なかった…、許してくれ」
「今さらそんなの…っ」
「ただこれだけは信じて欲しい。私は、父は…、羽留をずっとずっと愛していた。ここまで娘と共に生きてくれた鷹くんにも……感謝してもしきれぬ思いだと」
鷹が黙ったのは、きっと。
須磨さんから自分も贈られた言葉だったからなのだろう。
ずっと愛していた───と。
私たちが欲しいものはいつだって、こんな言葉ひとつだった。
「償いも含めておまえだけの城を用意しようと思っている。…今まで何もしてやれなかったぶん、これから父親としてできることなら何だってしよう」
「金じゃねーよ。物じゃねえんだよ、オレたちが欲しかったモンは……!」
「……いや、お金です」
「…………は??おい、ちょ、ウル、」
ごめん鷹。
本当にありがとう。
そこまで怒ってくれて、泣いてくれて、私はすごく嬉しい。
だから涙を止めちゃったこと、恨まないでね。
「お金が……、必要なんです」
お金でしか解決できないものが、私の近くにはたくさんある。