此方は十六夜の蝶。
「楼主さんがいらっしゃるまで、こちらで待っています」
「……遊ぼうよ。そんなのいいから」
「………、」
どこかもの寂しさの漂う顔をしていた。
久しく顔を合わせた私が私らしくない顔つきをしていたから、驚いているのだろうか。
「…ウル」
寂しいんだ、なんて言われたみたい。
すると緋古那さん、家臣たちへと一言。
「ここは女性の遊び場ですので。男性は遠慮していただけると」
誰なんだお前たちは───と。
眉を寄せ、緋古那さんにしては面白くなさそうな顔まで浮かべている。
私は静かに合図を出して、そのときが来たら呼ぶことを伝えた。
「婆や、このまま床に行く。他の客が来たとしても俺は不在と伝えてくれ」
「…承知いたしました」
え……、床……?
いつもは2階の座敷のはずだ。
茶屋として通して、そこで翔藍さんや右京さんにも盛り上げてもらう。