此方は十六夜の蝶。
あなたが積極的に私を床に連れていくだなんて。
そうしなかったのが緋古那さんだったというのに。
「まっ、待ってください…!今日は私はっ」
「黙って。乱暴はしたくないんだよ、俺も」
「っ…、」
ぐいっと引かれた手。
男の人には到底敵うものじゃないんだと、女はどうにか女にしかないもので言い聞かせるしかない。
けれど、私にそんな術(すべ)は持っていない。
「きゃ…っ」
ぽすんと、背中から倒される。
赤色で彩られた室内は、行灯の光さえ赤い月に見えた。
「ひこ、っ、ん……っ!」
いきなり深く奪われた唇。
これも緋古那さんらしくのない、焦っている口づけだった。
求めたときほど与えてくれないのに、今日はそうじゃないと私が断ったときは重ねてくる。