此方は十六夜の蝶。
「今まであなたに渡されたお金です。ここからは自由だよ、寅威さん」
「……返さなくていいって、言ったじゃないか」
「これは私の気持ちです」
このお金を使って船に乗ることもできるし、良い宿に泊まることだってできる。
今ならご飯屋もまだやっているだろうから、好きなものを食べればいい。
「身請けではないと、私は言いました。私はもう……たくさんの幸福を与えてもらっています。この先、あなたの笑顔があるのなら…それが私の幸せです」
好きに生きてください。
したいようにして、笑いたいように笑って、今までなかった自由を手にしてください。
「勝手なことばかり言って…、ごめんなさい。でも……ああするしか風見姫さまを振り払えないと思って…、」
「…嘘だったの?さっきの言葉、俺は嬉しかったのに」
「う、嘘じゃないです…!……けど、」