此方は十六夜の蝶。
「きみが嘘じゃなかったように、俺だって嘘なんかじゃないんだけどな」
「ひこなさ、…っ!」
「忘れたならもう1度、言ってあげようか?いいや。1度なんて遠慮せず、何回だって」
つよくつよく抱きしめられて、耳元。
「────俺の心も身体も、ウルのものだ」
我慢していた涙なんか、いつもいつも意味ないね。
10歳の私はよく泣かなかったものだと今になって思うほど、色気より食い気だったもんね。
月よりもうつくしいものに見惚れはしたけれど、到底届かないって諦めてもいたからなのかな。
それが今、こんなに近くにあって。
神様のようなキツネさんから腕を伸ばしてくれて、掴めてしまっているよ。
「…ウル?」
「いや、です…っ、風見姫さんと床についたのもっ、私を選んでくれなかったのも…っ、ぜんぶ嫌です……っ」
「…うん」
こんなに汚いの。
私ってね、こんなにも汚いんです。