此方は十六夜の蝶。
そうして「帰れ」と、追い返してくる。
ここでも侮辱されたんだ私は。
特例切手を手にしていたとしても、私のような娘は門前払いを受けるのが普通だと。
「向いてないな、吉原で遊ぶには。たかが俺の戯れ言に悲しんで喜んで泣いてるようじゃあ」
「で、でも…、特例切手…」
「こんなもの、俺に触れた時点ですでに無効だ」
「…あ…」
私から預かっていたそれを、彼はビリビリに破いてしまった。
「おまえのような女、俺が抱く価値もない」
冷たく言い放たれる。
だったらどうしてあんなこと、つぶやいたの。
最初、今となっては気休めに変わったお茶と和菓子が差し出されたとき、口にしていいものか迷って、私は手を付けられずにいた。
そのとき言ったでしょう、あなたは。
おまえには握り飯のほうがいいよな───と。