此方は十六夜の蝶。
「おかえり、鷹(たか)。わあ……それ鷹がひとりで釣ったの?」
「あったりめえよ!どーだ見直したか!」
「うん。ちょうど今日は裏の庭で取れたお野菜もあるから、いつもより豪華な夕餉になるね」
「よっし!オレ薪集めてくるよ!」
鷹は私と同じ歳の15歳。
彼もまた、親のいない孤児だった。
出会ったのは12歳の頃、そこから今に至るまで一緒に生活している。
家は古い小屋を見つけ、できる限りの再構築をさせて、なんとか住処として住み慣れてきた今だった。
「なあ、ウル」
「うん…?」
「おまえ……髪、伸ばさねーの?」
煮詰まった白身魚をはふはふと頬張りながら、鷹は聞いてくる。
「ああ…うん。もうしばらくはいいかなって…」
「もうしばらくって、出会ったばっかしの頃もそう言ってたぞ」
10歳のとある夜から、私の髪は短いまま。
結局は今もきれいな着物を身に纏えない身分のため、たまに男と間違われてしまうことも。