此方は十六夜の蝶。
「…きみらしいな」
納得したように瞳を伏せた緋古那さん。
「でも私…、やっぱりまた水月さんに会いたいです」
「……なら、また来ればいい」
「そんなお金……、なくて…」
この生活を見てもらえばわかる。
衣住食をつなぐだけで精いっぱいだということを。
鷹が完全にいなくなってしまったから、私ひとりでやるしかない。
海に潜ろう、山へ出向こう、果たしてその生活がどこまで続くのか。
「今から俺はウルにひとつ、交換条件を提示してもいいかな。もちろん受けるか断るかはきみ次第だから、重く考える必要はない」
「…交換条件……?」
「そう」
とりあえず聞いてみるの意味を込めて、私はコクリとうなずいた。
「これから俺はきみに金を渡そう。ここの生活が回って、また吉原に来られるくらいの額は渡す。その代わり、対価としてウルは俺に幸福を渡して欲しいんだ」
「…幸福……、それは、どんな……?」
「俺に会いに来てくれればいい。それだけで俺の幸福は満たされるから」