イヴの鳥籠~エリート貴公子の甘い執着愛
テオドールさんはその後に続いて、吹き抜けのエントランスホールを抜けて奥の廊下を進む。床はすべて鏡面のように輝く大理石で、コツコツという規則正しい二人分の足音が小気味よく響く。

「屋敷の中の案内は明日ゆっくりするから。まずはお風呂に入ってさっぱりしておいで」

「は、はい…ありがとうございます」

てっきり使用人用のお風呂を使わせてもらえるのかと思っていたら、案内されたのはとても豪奢な浴室で、さらにその隣りには洗面とパウダールームが備わっており私は狽えてしまった。

(この広さと豪華さは、どう見ても主人であるテオドールさんが使用する浴室なのでは…?)

そんなところに私が先に入ってしまって良いわけがない。
おろおろしている私をよそに、テオドールさんはパウダールームの一人掛けソファーに私を丁重に降ろしてしまった。

「あのっ、私がここを使わせていただくわけには…!」

「どうして?」

「どうしてって…」

「あぁもしかしたら使い方が分からないかもしれないってこと?心配ないよ。浴室にはすでにメイドが二人待機しているから彼女たちがすべてやってくれる」

(そういうことではなくて…!)

「お着替えの方もすべてメイドがお手伝いさせていただきますので、アンゼリカ様はどうぞご心配なく。それでは失礼致します」

私の心の叫びも虚しく、テオドールさんとセトさんはパウダールームを出て行ってしまった。

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