イヴの鳥籠~エリート貴公子の甘い執着愛
「アンゼリカ?もしかして具合が悪いのかい?」

心配そうに私の顔を覗き込むテオドールさんの優しさに、胸が締め付けられる。

「どうして、私にここまでしてくださるんですか…?」

私は両手で服の裾をきつく掴む。

「テ、テオドールさんは私の新しいご主人様なのに…それが分からなくて怖いんです。だって私、何も持っていません」

こんなに良くしてもらっていると、つい数時間ほど前まで『闇オークションの商品』だったという、名前も尊厳も奪われていた卑しい身分に落ちていたことを忘れそうになる。

私は『商品』で彼はお金で買った『ご主人様』。

私は彼の所有物にすぎない。

それなのにこんなふうにもてなされてしまったら、まるで対等な立場になったかのように勘違いしてしまいそうになる。

「アンゼリカ…」

テオドールさんは一体何を考えているんだろう。

もしかしたらこれはテオドールさんなりの情けで、この後現実を思い知るのかもしれない。

でもそうなら、初めから地獄に落としてほしい。
優しくして、夢を見させないでほしい。

だって、そうじゃないと。
期待した後に落とされるときの絶望を――私は身をもって知っているから。

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