イヴの鳥籠~エリート貴公子の甘い執着愛
ノートン地方アスバル領。

確かにその地は私の生まれた故郷で、ヴラディカ家が8年前まで治めていた領地だ。

「僕は7歳からノートン地方のクレル領にある寄宿学校に通っていた。
そして8年前の夏…僕が14歳のときに君に初めて出会って、それから何度か君に会っているんだよ」

8年前の夏。

ヴラディカ家が没落した年の、あの夏に…?


「寄宿学校の夏の休暇の間、僕と君はよく一緒に遊んだ。けれど休暇が終わって僕が寄宿学校に戻った後…君の家であるヴラディカ家が取り潰しになったと知ったんだ」

8年前の私との出会いを話しても私の反応がいまいちピンときていないことに、テオドールさんは明らかに落胆しているみたいだった。

私は申し訳なくなって、膝の上に置いた手をきつく握り締めることしかできない。

「ごめんね…いきなりこんな子どもの頃の話をされても困らせてしまうのは分かっていたんだけど」

私は強く首を振った。

もし本当にテオドールさんが私をずっと探してくれていたのなら、私もその真摯さに向き合わなければいけないと思った。真実を話さなければいけないと。

「私も、テオドールさんにお話ししなければいけないことがあります」


私は意を決して顔を上げると、隣りに座るテオドールさんのはちみつ色の瞳を見つめる。

私からこれまでと違う雰囲気を感じ取ったのか、テオドールさんは私の手を上から包み込むように握ってくれる。


「私…8年前までの、アスバルで暮らしていた頃の記憶がないんです」





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