イヴの鳥籠~エリート貴公子の甘い執着愛
父が友人に持ちかけられて共同出資した事業は、没落するさらに2年前からすでに傾き始めていた。

父は撤退したがっていたけれど、友人が父よりも身分の高かったこともあり、父には決定権はおろか発言権すらまともになく。
そして本格的に危ないとなったとき、友人は父にすべての事業の責任を負わせる形で――手を引いてしまった。

父は騙されていた。気がついたときには会社に関する書類は父名義に書き換えられており、共同出資の体ですらなくなっていた。おそらく、友人に雇われた弁護士がすべて手引きしたのだろう。

そしていつの間にか抵当に入れられていた屋敷を取り押さえられ、すべての資産を借金返済のために没収された。

住む場所がなくなった私たちは皆バラバラになった。
父や母がどうしているのかは私にも分からない。

「私はまだ10歳だったので教会が運営する養護施設に2年間入りました。でもそこは結構荒れていて…新参者で元男爵家という身分の私はよくいじめの対象になりました。
15歳までいられる施設でしたけど私は少しでも早く出たくて、運良く慈善事業に積極的だったガドー地方の領主のお屋敷がメイドを探していると声をかけてもらって、そこでメイドとして働かせていただくことができました」

「あぁ、実は調べたから知っている。確かエルマー子爵家のところだね?」

「はい」

まさか知っているとは思わなくて私は驚きながらも頷く。

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