イヴの鳥籠~エリート貴公子の甘い執着愛
これが、8年前から今日までの出来事。

軽蔑されるかもしれないし、幻滅されるかもしれない。
もしかしたら、ここを追い出されるかもしれない。

それでも、ちゃんと真実を話しておきたかった。


ソファーが少し軋む音がして、テオドールさんの体が動いたのが分かった。

――もしかして、隣りにも座っていたくないのだろうか。

そんなことが頭をかすめたとき、テオドールさんとの距離が近づいて、次の瞬間、私はテオドールさんの胸の中に抱きしめられていた。


「よく、一人で頑張ったね。

ここでは、もう何も辛いことはないよ」


―――テオドールさん……


瞬間、まるで閉じ込めるみたいに抱きしめられた腕の中で、私はわんわんと声を上げて泣いた。

この何年間も我慢していた涙が一気に決壊してとめどなく溢れてくるようで、泣いても泣いても終わりがないみたいに零れ落ちていく。


家がなくなったとき寂しかった。

養護施設でいじめられて辛かった。

私は誘惑なんかしてないのに、悪いことはしていないのに。

今日誰かに買われるのだと思うと怖かった。逃げ出したかった。


涙とともに堰を切ったように溢れる支離滅裂な私の言葉にも、テオドールさんはその一つ一つに「うん、うん」と頷いて頭を撫でてくれた。

こんなに泣くのは、初めて養護施設に連れられてきた日の夜。
一人寂しくて泣いた日以来だと思う。

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