イヴの鳥籠~エリート貴公子の甘い執着愛
「テオドールさん…お気持ちはとても嬉しいです。
でも私は今、過去のことを何も覚えていません。私…テオドールさんとのことをすべて思い出して…その上でちゃんとお応えしたんです。それまで、待ってもらうことはできませんか…?」

テオドールさんがずっと私を思っていてくれたこと。
こうして探して…妻にしたいとまで思ってくれていることは、身に余るほどの光栄で幸せなことだ。

でも、私が何もかも忘れたままで、
彼の愛を受けるのはとても不誠実なように思えた。


私の言葉に、テオドールさんは少し困ったように微笑む。


「あの頃から、君のお願いに僕はとても弱いってことを知っていて、そう言っているのかな?」

「…っ!ち、違います、そういうわけでは…」

少し意地悪な視線を受けて、私は慌てて首を振ると「ごめん、冗談だよ」と軽く笑う。

「君の気持ちは分かったよ。
一つ確かめておきたいんだけれど、今の君は僕が嫌だというわけでないんだよね。僕を――好いてくれる可能性は残されていると…そう思ってもいい?」

「……はい、もちろんです」

「ありがとう。それが聞けただけでも十分だし嬉しいよ。じゃあ…ひとまず僕たちの間は内々で婚約という形でいいかな?」

「……こ、こんやく…」

あまりの急な展開に頭がついていかないけれど。

まるで懇願するような瞳に見つめられると、私は「……はい」と頷くことしかできなかった。

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