イヴの鳥籠~エリート貴公子の甘い執着愛
「アリントン寄宿学校に戻りたいんだけど、道が分からなくなって」

恥ずかしい。
こんな美しい少女の前で、自分が迷子だと告白するなんて。

「アリントン寄宿学校?あっ、も、申し訳ございません私ってば…!ご無礼をお許しください」

深々と頭を下げる彼女に、僕は一時の恥ずかしさも忘れてしまった。

アリントン寄宿学校といえば、この国の名門と呼ばれる貴族の令息が通う学校だ。彼女もこの地に住んでいるのだからその名前くらいは知っているのは当然のことだった。

突然慌てて畏まる姿に、僕は首を振る。

「そんなに畏まらないで。僕はスヴェン子爵の息子でテオドールだ。君は?」

僕は公爵家の血筋であることは隠し、父が祖父から譲られた子爵位の方を名乗って自己紹介をした。

嘘は言っていないし、公爵家なんて言ったら彼女はますます恐縮して顔を上げられなくなってしまうに違いない。

彼女との間に距離を作りたくなかった。
もっと、近づきたかった。

「はじめまして…私は、アンゼリカ・ヴラディカ」

「ヴラディカ…うん、知っているよ。この地方のアスバル領を治める男爵家だね」

つまり彼女もそこまで高い身分ではないにしろ令嬢だということになる。

彼女は僕が知っていることが純粋に嬉しかったのか、途端に花が咲いたように笑顔になった。

(あぁ、本当に可愛い…)

彼女が微笑むたび、大きな青い瞳が僕を見つめるたびに胸が高鳴った。

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