イヴの鳥籠~エリート貴公子の甘い執着愛
「たぶん、自信がないから…だと思います」

「それは僕に愛されていないと感じている、ということ?」

「いえ、そうじゃないです。だけど、」

「記憶が戻らないから?」

私は力無く、こくんと頷く。

テオドールさんが私に伝えてくれた思いが嘘だとは思わない。
もし嘘なのだとしたら8年も私を探したりしないし、あんな大金を使うはずもない。

けれどその根拠となる記憶が、共有されるはずの思い出がすっぽり抜け落ちていることが、私を心許なくさせる。

そんな気持ちを抱えたまま、
自分の存在も置かれた立場も分からないまま、

ただ与えられるだけを待つのは、まるで籠の鳥のようで。


「……籠の鳥か。本当に閉じ込めることができたら、どんなにいいだろうね」


テオドールさんは頼りなげな声で呟く。

私は何と返したらいいのか分からなくて、ただ握り締めた手だけを見つめていた。

< 47 / 57 >

この作品をシェア

pagetop