イヴの鳥籠~エリート貴公子の甘い執着愛
彼女の父は確かに騙されたかもしれない。

でも、あんな酷い状態になる前に途中で引き返すことはできたはずだ。
もともと事業の才などないにも関わらず話に乗り、それから勉強を怠って家を危機に陥れた。

いくら騙されたとはいえ、父親の罪は重い。

「よろしいんですか?」

「アンゼリカを会わせるなんてもってのほかだ」

アンゼリカは優しい。

けれど優しすぎて、例えば父に泣きながら請われたら彼女はきっと許すだろう。
そして、同情を引くようにもう一度だけ暮らそうと懇願されたら。

きっとその手を振り払うことはできないに違いない。

もしもそうなったら?
父と暮らすと言って、ここを出て行くようなことになったら?

そんなことは絶対に許さない。
だから、会わせることなどしない。

幸いアンゼリカは父母の行方を知らない。

アンゼリカが僕と結婚し名実共に妻となるまでは、今はこのままでいい。

僕はマッチを擦ると封筒に火をつけて燃やし、火のついたそれを銀のトレーの上に落として手紙が燃えカスになるのを見つめた。


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