凡人の私は最強異能力者の貴方に恋をする。
ミランダの疑惑
 ある晴れた日の午後、ミランダは自宅にあるクイーンサイズのベッドに身を投げて不満そうに執事のアインに文句をぶつけていた。
「一体どういうことよ!ナハトと私がダンスのペアじゃないなんて!」
 ミランダは再びベッドへ顔をうずめるとバタバタと足をバタつかせる。
「お嬢様、品がありませんよ。いい加減お紅茶が覚めてしまいます」
 アインは困ったように、ミランダを注意すると本日何度目かわからない主の文句に頭を悩ます。
「そんなに、不満ならお父様にお願いしてみてはいかがですか?」
「お願いしたわよ!でもどうせ後一年で結婚するからいいだろうですって!」
 ミランダはそういって、仰向けになる。
「ならいいではありませんか。どうせナハト様とご婚約される予定ならそんなに心配なさることもありませんよ」
 アインはそういうとミランダの前にお菓子の乗ったプレートを差し出す。
「アインまでそんなことおっしゃるの?私にとっては最後の晴れ舞台なのに」
 ようやく後一年でナハトと婚約まで漕ぎつけたミランダは、最後の青春をどうしても愛するナハトと共に過ごしたかった。それなのに、相手が王族ですらない下級市民だったことが腹立たしくて仕方がない。
「それにしても、変ですね。毎年王族は王族同士でペアが決まるはずなのに…」
 アインは不思議そうに首をかしげる。
「絶対なんか変よ!もう一度ペア分けしてもらえるように私学長に頼んでみるわ」
「それは難しいかと…」
 興奮気味のミランダを止めるように、アインは口をはさむ。
「どうしてよ…」
「この学園のすべての決定権はアレン・ウォール学長にあります。ですが、近年学長は平和維持活動にお忙しく、ほとんど学園にはおりません」
 新人類の中でも有識者と位置づけられている、学長のアレン・ウォールは現在、様々な惑星を飛び回り平和についての重要性を説いているのである。
「それなら副学長のカール・メアリーにお願いするわ。彼女なら王族との関係も深いし、少しくらいなら変更を許してくれるはずよ」
 ミランダはそういうと、ようやくその場へと起き上がり、ぬるくなった紅茶に口をつけた。
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