凡人の私は最強異能力者の貴方に恋をする。
翌日、カナは緊張した面持ちで三学年のエリアへと訪れていた。理由は言わずもがなミランダとの約束を果たすためである。
許嫁がいながら自分のような旧人類とダンスの練習をしていたナハトにカナは余計に腹が立った。何故教えてくれなったのか、何故ペアを解消してくれなかったのか、カナの心の中にはナハトへの疑念が膨らんでいく。
「なんだ、お前は」
途中、廊下で教師に声をかけられたカナは素直にナハトに言伝があると伝えた。しかし、教師はお前のような旧人類と話をするほど彼は暇ではないと、カナを追い返そうとする。
「お願いします!どうしてもお伝えしなくてはいけないことがあるんです」
「お前が王子に言伝など百年早い。罰則を受けたくなければ自分の教室に戻りなさい」
「で、ですが!」
周囲には騒ぎを聞きつけた野次馬らしき生徒が、面白そうに二人の成り行きを観察している。
「しつこい奴だな!いい加減にしないと退学にするぞ!」
「お、お願いです!」
「だめだ!これ以上煩くするなら…」
「彼女がどうかしたか?」
教師と言い争っていると、よく聞きなれた声がカナの耳に響いた。
「ナ、ナハト様…」
「もう一度聞く、彼女がどうかしたか?」
教師を鋭く睨みつけると、ナハトは再び同じ質問を繰り返した。
「い、いえ…、実はこの旧…、地球人の生徒が王子に言伝があるとかなんとか…」
教師はできるだけ差別用語を避けてナハトに弁解する。
「ほう、それならば話を聞く必要があるな」
ナハトは今まで以上に鋭い眼光でカナを見つめる。
「え、えっと…」
まさか、たくさんの野次馬がいる中で話すと思っていなかったカナは急に口元が重たくなる。
「どうした?さっさと話してみろ」
何故かいつにもまして王子らしい立ち振る舞いをするナハトにカナは怖くなる。ここにいるのはいつも二人きりで優しくしてくれた彼ではない。新人類の誇り高き王子である。
カナは震える手をぐっと握りしめる。いつもなら騒ぎ立てる野次馬も、ナハトが相手のためか今日に限っては静まり返っている。
「あ、あの!突然の無礼をお許しください。じ、実はダンスパーティーのペアについて解消させていただきたくお願いをしに参りました!」
カナは不慣れな敬語を使ってナハトに頭を下げる。
「やはり私には貴方様とのペアは務まりません!ここは私のような旧人類の女ではなく、許嫁であるミランダ様とペアを組まれるべきかと思います!」
カナの言葉にナハトは一瞬目を見開く。カナはゆっくりと頭を上げると何を思ったのか、周囲の野次馬にも賛同を求めた。
「み、皆さんもそうは思いませんか?私のような旧人類の女より、許嫁であるミランダ様の方がペアとして相応しいと…、そして、それが本来あるべき姿だと」
カナの言葉に周囲の野次馬がざわつき始める。
「まあ、確かに王族が旧人類と踊るのはね…」
「ってか、あの子わざわざそんなこと言いに来たの?」
「でも、またミランダって感じもするけど…」
あたりが、一層騒がしくなり始めたその時、ナハトは静かに右手を上げた。すると、そのたった一つの仕草で再び周囲は驚くほど静まり返った。
「要件は、分かった。しかし、これは決定事項だ。今更変更するつもりはない。王子である俺が変更を許せばこの決定事項は一気に崩れ去る。故にその願いは聞き入れられない」
「し、しかし!」
「稽古に来たくなければ来なくていい。しかし、ダンスパーティー当日は必ず出席しろ。それがお前たち一年の義務だ。このパーティーはお前達のために毎年行われている行事だ。そこに旧人類も、新人類も関係はない。俺からは以上だ」
ナハトは事務的にそう告げると、踵を返して姿を消した。周囲にいた野次馬達もチャイムの音に徐々に方々へ散っていく。
残されたカナはその場に立ち尽くしていた。何故ナハトは首を縦に振らないのか、何故そんな意地悪をするのか、何故私を解放してくれないのか、カナの頭の中はそんな思いで一杯だった。
許嫁がいながら自分のような旧人類とダンスの練習をしていたナハトにカナは余計に腹が立った。何故教えてくれなったのか、何故ペアを解消してくれなかったのか、カナの心の中にはナハトへの疑念が膨らんでいく。
「なんだ、お前は」
途中、廊下で教師に声をかけられたカナは素直にナハトに言伝があると伝えた。しかし、教師はお前のような旧人類と話をするほど彼は暇ではないと、カナを追い返そうとする。
「お願いします!どうしてもお伝えしなくてはいけないことがあるんです」
「お前が王子に言伝など百年早い。罰則を受けたくなければ自分の教室に戻りなさい」
「で、ですが!」
周囲には騒ぎを聞きつけた野次馬らしき生徒が、面白そうに二人の成り行きを観察している。
「しつこい奴だな!いい加減にしないと退学にするぞ!」
「お、お願いです!」
「だめだ!これ以上煩くするなら…」
「彼女がどうかしたか?」
教師と言い争っていると、よく聞きなれた声がカナの耳に響いた。
「ナ、ナハト様…」
「もう一度聞く、彼女がどうかしたか?」
教師を鋭く睨みつけると、ナハトは再び同じ質問を繰り返した。
「い、いえ…、実はこの旧…、地球人の生徒が王子に言伝があるとかなんとか…」
教師はできるだけ差別用語を避けてナハトに弁解する。
「ほう、それならば話を聞く必要があるな」
ナハトは今まで以上に鋭い眼光でカナを見つめる。
「え、えっと…」
まさか、たくさんの野次馬がいる中で話すと思っていなかったカナは急に口元が重たくなる。
「どうした?さっさと話してみろ」
何故かいつにもまして王子らしい立ち振る舞いをするナハトにカナは怖くなる。ここにいるのはいつも二人きりで優しくしてくれた彼ではない。新人類の誇り高き王子である。
カナは震える手をぐっと握りしめる。いつもなら騒ぎ立てる野次馬も、ナハトが相手のためか今日に限っては静まり返っている。
「あ、あの!突然の無礼をお許しください。じ、実はダンスパーティーのペアについて解消させていただきたくお願いをしに参りました!」
カナは不慣れな敬語を使ってナハトに頭を下げる。
「やはり私には貴方様とのペアは務まりません!ここは私のような旧人類の女ではなく、許嫁であるミランダ様とペアを組まれるべきかと思います!」
カナの言葉にナハトは一瞬目を見開く。カナはゆっくりと頭を上げると何を思ったのか、周囲の野次馬にも賛同を求めた。
「み、皆さんもそうは思いませんか?私のような旧人類の女より、許嫁であるミランダ様の方がペアとして相応しいと…、そして、それが本来あるべき姿だと」
カナの言葉に周囲の野次馬がざわつき始める。
「まあ、確かに王族が旧人類と踊るのはね…」
「ってか、あの子わざわざそんなこと言いに来たの?」
「でも、またミランダって感じもするけど…」
あたりが、一層騒がしくなり始めたその時、ナハトは静かに右手を上げた。すると、そのたった一つの仕草で再び周囲は驚くほど静まり返った。
「要件は、分かった。しかし、これは決定事項だ。今更変更するつもりはない。王子である俺が変更を許せばこの決定事項は一気に崩れ去る。故にその願いは聞き入れられない」
「し、しかし!」
「稽古に来たくなければ来なくていい。しかし、ダンスパーティー当日は必ず出席しろ。それがお前たち一年の義務だ。このパーティーはお前達のために毎年行われている行事だ。そこに旧人類も、新人類も関係はない。俺からは以上だ」
ナハトは事務的にそう告げると、踵を返して姿を消した。周囲にいた野次馬達もチャイムの音に徐々に方々へ散っていく。
残されたカナはその場に立ち尽くしていた。何故ナハトは首を縦に振らないのか、何故そんな意地悪をするのか、何故私を解放してくれないのか、カナの頭の中はそんな思いで一杯だった。