凡人の私は最強異能力者の貴方に恋をする。
人間をやめた日
 気づけば時が経つのは早いもので、この前までジャージ姿で中学校まで通学していたことが懐かしく思えてくる。
「え、カナあの流星学園に行くの?」
 幼馴染の唯にそう言われたのは卒業式の打ち上げに行く道すがらの事である。
「うん、願書出したら速攻来てください、だってさ」
 斎藤カナはスマートリングから映し出されるホログラム映像を見ながら答えた。
「それって、大丈夫なの?あそこ差別激しいって話だよ?」
 実際、流星学園に入学した者は壮絶ないじめによって自主退学を余儀なくされている。故に地球人の卒業者がまだ一人も居ないことが問題視されており、願書を出せば即入学が許可されている。
「うん。でもうちレブルに該当しちゃってるし」
 カナはどこか諦めた表情でほほ笑む。新人類がこの星の実権を握ってからというもの、もともと地球に住んでいた者達は職業を制限され、満足のいく収入を得られなくなってしまった。特にもともと政府関係者だったものは酷い迫害を受け、そのほとんどがレブルといって差別された。
「そっか、カナのお父さんもともと政治家だったもんね」
唯は申し訳なさげに、呟く。
「別に、今更気にしてないよ。どっちにしろそうなる運命なんだって思ってるから」
 端から自分が普通の高校を卒業できるとは思っていないのか、カナは諦めた様に肩を落とす。
「いじめられたら、私に言いなさいよ?ぶん殴ってやるんだから!」
 そんなカナの様子に唯は拳を前に出してポーズをとった。彼女は昔から格闘技をやっていて対人戦には自信があるようだ。
「ありがと。頼もしい限りだわ」
 そういって友人と笑いあったこの日、私は人間であることを放棄したのかもしれない。
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