凡人の私は最強異能力者の貴方に恋をする。
 翌日、教師の告知通り学園の生徒一人ひとりに、ダンスパーティーの招待状が配られた。もちろん、カナもその招待状を受け取ったわけだが、開封してすぐに、これまでの過ちを悔やんだ。
 なぜなら、その招待状には斎藤カナの名前の隣に「ナハト・ライハン・ジーク」と書かれていたからだ。
 いや、きっとこれはよく似た名前の学生に違いない。カナは招待状を隠すように頭を伏せた。きっとそうだ。そうに違いない。私が王族の学内一のモテ男とダンスなんてあるはずがない。
 カナは何度もそう自分に言い聞かせる。そして、昨日ミラに言われた言葉どおり、休む理由について考えを巡らせ始めた。
「はい、それではみなさん。さっそく二人組になって練習を始めます」
 教師はそんなカナの事などお構いなしに、生徒に椅子を下げるように指示を出す。
「練習時間ですのでペアは自由です。仲の良いお友達と組んでもらって構いません」
 教師の言葉にカナは諦めたようにあたりを見渡す。このクラスはもともと奇数人数である。わざとなのか定かではないが、必ず旧人類のカナが余りになることはこの数週間の学園生活で実証済である。
「あら、また貴方が余り?仕方ないから今日は見学してなさい」
 大体、いつもこの流れのパターンであるため、決まってカナは隅っこで体育座りをする羽目になる。おそらくダンスの練習には参加させず、ぶっつけ本番で恥をかく姿がみたいのであろう。
 退屈なクラスメイトのダンスを目で追いながら、カナはペアであるナハトについて、どうすべきか頭を抱える。このままでは彼の前で大恥をかくことになる。唯一優しくしてくれた新人類の前でそんな失態をさらす訳にはいかない。
 やはり、ここはミラの言う通り学校を休む選択が一番だろう。どうせ、練習には参加できないのだ。
 カナはそう考えると、心の中で静かにナハトに謝罪した。
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