凡人の私は最強異能力者の貴方に恋をする。
ナハトの憂鬱
 毎年飽きることもなく開催されるダンスパーティにナハトは内心飽き飽きしていた。毎年、この年になると男女のペアが公表され、みな一喜一憂する姿がなんとも不愉快だ。
 特に不正を冒してまでも、自分と組みたがる女子の存在にナハトは頭を悩ませていた。
「どうしたライハン、んな怖い顔して」
 幼馴染のレオン・ルイス・ギルバードが、怖い表情で招待状を見つめるナハトに声をかけた。
「レオン、いつも言うが俺を王族名で呼ぶな」
 ナハトは一層眉間に皺を寄せて答える。
「へいへい、んじゃあ、どうしたんですか?ナハト王子」
 しかし、レオンはさして気にすることなく、ナハトの前の席へと腰掛けた。
「これを欠席する理由を考えている…」
 ナハトはいたって真面目にそう答えると、レオンはおかしそうに吹き出した。
「んだよ、それ。まだ誰とペアになるかわかってないじゃん」
 レオンの言葉にナハトは「見なくても大体見当はつく」と不愉快そうに答えた。
「へー、じゃあ誰とペアなんですか?王子?」
「ミランダだろ」
 レオンの言葉にナハトは自分の招待状を手渡す。どうやら開封しろとのことらしい。
「お前、なんで毎年ミランダとペアなの?」
 レオンは言われた通り招待状を開封しながら尋ねる。
「どうせ、惑星間の中立を取り持つために父上が仕組んだんだろ。最近は結婚、結婚、うるさいしな」
「王子様も大変だねー、さてじゃあ、答え合わせしてみますか」
 レオンはドラム音をわざとらしく真似ると、三つ折りにされた招待状を勢いよく開いた。
「ん?あれ?」
「…どうした?」
 開封後、すぐにその紙面を押し付けてくるだろうと思っていたナハトはレオンの意外な反応に首をかしげる。
「あ、いや。なんかミランダじゃないみたいだぜ?」
 意外な返答にナハトはレオンから招待状を奪い取った。
「………」
 そこには「ナハト・ライハン・ジーク」の隣に「斎藤カナ」と書かれている。
 ナハトは一瞬驚いた表情を見せると、珍しく微笑みをこぼした。
「おい!誰だよ!聞いたことねえ名前だぞ?って、なんだよ。嬉しそうにしやがって!」
 目の前で混乱するレオンにナハトは「秘密だ」とだけ伝えると、颯爽とどこかへ姿を消した。 
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