あなたが居なくなった後 ~シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました~
第九話・遺影
仏壇に供えていたお花の水を替え終えると、優香はそれを夫の遺影の隣へそっと設置する。仏壇の中に立て掛けられた写真の中で、大輝は変わらずとても穏やかに笑っている。
赤と黄色の小さな花に囲まれた、一輪の大きい白菊。中央で存在感を示しているその白い花が、常に人に囲まれてその中心で穏やかに笑っていた生前の夫の姿と重なってしまう。
いつも沢山の友人達が自然に大輝の周りに集まってきていた。彼は決してリーダータイプではなかったけれど、とても盛り上げ上手だった。だから、彼の周りは普段からかなり賑やかだった。否、騒々しいくらいのことが多かった。
この仏壇に飾られた遺影をどの写真から作って貰うかを決める時、優香は夫のその気質をこれでもかと思い知らされた。彼の遺品の中を探していると、アルバムに整理できない程の写真が大雑把に箱の中に突っ込まれていて、「こんなにあるなら一枚くらいは良いのがありそう」と当然のように期待したが、直近の彼の写真でまともに写っている物が一枚もなく、思わず呆れ笑ってしまった。
高校の卒業アルバムでさえ、真顔では写っていない。
「なんで、普通に写ってるのが一枚もないの?!」
どの写真の中の大輝もふざけたポーズで、おどけた表情ばかり。これをそのまま使ってはしんみりと偲ぶ気分も吹っ飛んでしまいそうだし、何より罰当たりな気がしてしまう。もし三途の川を渡る際にパスポートのように遺影を確認されるのなら、間違いなくふざけてると怒られて渡し舟には乗せて貰えないだろう。ま、大輝なら自力で泳いで渡ってしまいそうだけれど……。
彼の写真はどれを見ても、これを撮影した時の周囲の笑い声までが聞こえてきそうだった。周りの人達も彼の表情やポーズに釣られ、堪え切れずに大爆笑している。本当に、彼は人を楽しませるのが得意な人だった。
その中には優香も一緒に写っている物も何枚もあって、その時の自分も彼の隣で大きな口を開け、目を細めて笑っていた。いちいち澄ましたキメ顔なんて作ってられないほど、彼の傍では常に自然体でいられた。もし無理してお上品な表情を作ろうものなら、それをネタに揶揄われて、結局は笑わされてしまうだけだ。
赤と黄色の小さな花に囲まれた、一輪の大きい白菊。中央で存在感を示しているその白い花が、常に人に囲まれてその中心で穏やかに笑っていた生前の夫の姿と重なってしまう。
いつも沢山の友人達が自然に大輝の周りに集まってきていた。彼は決してリーダータイプではなかったけれど、とても盛り上げ上手だった。だから、彼の周りは普段からかなり賑やかだった。否、騒々しいくらいのことが多かった。
この仏壇に飾られた遺影をどの写真から作って貰うかを決める時、優香は夫のその気質をこれでもかと思い知らされた。彼の遺品の中を探していると、アルバムに整理できない程の写真が大雑把に箱の中に突っ込まれていて、「こんなにあるなら一枚くらいは良いのがありそう」と当然のように期待したが、直近の彼の写真でまともに写っている物が一枚もなく、思わず呆れ笑ってしまった。
高校の卒業アルバムでさえ、真顔では写っていない。
「なんで、普通に写ってるのが一枚もないの?!」
どの写真の中の大輝もふざけたポーズで、おどけた表情ばかり。これをそのまま使ってはしんみりと偲ぶ気分も吹っ飛んでしまいそうだし、何より罰当たりな気がしてしまう。もし三途の川を渡る際にパスポートのように遺影を確認されるのなら、間違いなくふざけてると怒られて渡し舟には乗せて貰えないだろう。ま、大輝なら自力で泳いで渡ってしまいそうだけれど……。
彼の写真はどれを見ても、これを撮影した時の周囲の笑い声までが聞こえてきそうだった。周りの人達も彼の表情やポーズに釣られ、堪え切れずに大爆笑している。本当に、彼は人を楽しませるのが得意な人だった。
その中には優香も一緒に写っている物も何枚もあって、その時の自分も彼の隣で大きな口を開け、目を細めて笑っていた。いちいち澄ましたキメ顔なんて作ってられないほど、彼の傍では常に自然体でいられた。もし無理してお上品な表情を作ろうものなら、それをネタに揶揄われて、結局は笑わされてしまうだけだ。