あなたが居なくなった後 ~シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました~
雑に保管されていた写真の一枚一枚が、あまりにも大輝らしくて、優香はマッチョポーズ姿の夫の写真を握りしめたまま、嗚咽を漏らした。
遺影に使う写真を選ぶのが、こんなに辛いことだとは思いもしなかった。写真の中の故人は元気だった時のままで、当時をつい昨日のことのように思い出せてしまう。だから、もうこの表情を直接見ることは叶わないと思うと、寂しさと悲しさに押しつぶされそうになる。
そして、笑顔で写っている本人は、これが自分の死後に仏壇に飾られるかもしれないとは考えてもいないのだ。それはとても可哀そうでいたたまれない。
「遺影には、顔だけを使うんだよね……」
葬儀場のスタッフからの説明を思い出して、確認するように呟く。合成加工で首から下は何とでもなると言われていたから、せめて正面を向いて変顔していない写真をと、写真の束をまた一から見直していく。
できるだけ、大輝らしい表情の写真をと、穏やかに微笑んでいる物を選んだが、首から下はお得意のマッチョポーズだ。しかも、余興か何かの写真だったのか、サイズがパツパツのセーラー服を着ている。これを葬儀社の人へ預けるのは、少しばかり勇気が必要だった。
その、実はセーラー服でマッチョポーズをしている大輝の遺影を眺めて、優香は小さく頷く。今の夫にはもう言葉は要らない。優香の決意を大輝がすぐ傍で見守ってくれていると信じるだけ。
もうすぐ夫の一周忌を迎えることになる。残された家族にとっては、まだ一年。でも、これは一つの節目だ。節目を越えたからと何かが急に変わる訳ではないけれど、少しずつでも変わっていかなければいけない。だって、優香達は生きていて、これから先の未来も待っているのだから。
彼を失った後、自分にできることを探りつつ、何とかこの日を迎えることができた。妊娠したと同時に勤めていた会社を辞めて、すっかり社会から離れてしまったと思っていた自分が、パートとはいえまた働き始めた。
大輝が生きていれば、きっと3歳から幼稚園に入れていたはずの陽太も、生後半年で保育園に預け入れることになった。本来はそんなつもりはなかったのにということばかりだ。何もかも、予定は狂いまくってしまった。失うと思っていなかったものを突然失ったせいだ。
それでもこうして、優香も陽太も元気に生活をすることができている。大輝が残してくれたものも大きいし、宏樹を始めとする周囲の支えがあったおかげだ。
遺影に使う写真を選ぶのが、こんなに辛いことだとは思いもしなかった。写真の中の故人は元気だった時のままで、当時をつい昨日のことのように思い出せてしまう。だから、もうこの表情を直接見ることは叶わないと思うと、寂しさと悲しさに押しつぶされそうになる。
そして、笑顔で写っている本人は、これが自分の死後に仏壇に飾られるかもしれないとは考えてもいないのだ。それはとても可哀そうでいたたまれない。
「遺影には、顔だけを使うんだよね……」
葬儀場のスタッフからの説明を思い出して、確認するように呟く。合成加工で首から下は何とでもなると言われていたから、せめて正面を向いて変顔していない写真をと、写真の束をまた一から見直していく。
できるだけ、大輝らしい表情の写真をと、穏やかに微笑んでいる物を選んだが、首から下はお得意のマッチョポーズだ。しかも、余興か何かの写真だったのか、サイズがパツパツのセーラー服を着ている。これを葬儀社の人へ預けるのは、少しばかり勇気が必要だった。
その、実はセーラー服でマッチョポーズをしている大輝の遺影を眺めて、優香は小さく頷く。今の夫にはもう言葉は要らない。優香の決意を大輝がすぐ傍で見守ってくれていると信じるだけ。
もうすぐ夫の一周忌を迎えることになる。残された家族にとっては、まだ一年。でも、これは一つの節目だ。節目を越えたからと何かが急に変わる訳ではないけれど、少しずつでも変わっていかなければいけない。だって、優香達は生きていて、これから先の未来も待っているのだから。
彼を失った後、自分にできることを探りつつ、何とかこの日を迎えることができた。妊娠したと同時に勤めていた会社を辞めて、すっかり社会から離れてしまったと思っていた自分が、パートとはいえまた働き始めた。
大輝が生きていれば、きっと3歳から幼稚園に入れていたはずの陽太も、生後半年で保育園に預け入れることになった。本来はそんなつもりはなかったのにということばかりだ。何もかも、予定は狂いまくってしまった。失うと思っていなかったものを突然失ったせいだ。
それでもこうして、優香も陽太も元気に生活をすることができている。大輝が残してくれたものも大きいし、宏樹を始めとする周囲の支えがあったおかげだ。