記憶を求めて、触れた優しさ。
✱ ✱ ✱ ✱ ✱
【記憶の向こう】
芹那は夢を見ていた。
『どうしても知って欲しかったんだ』
君は誰……?
『なんにも知らないくせにッ、私のこと振り回さないでよッ!』
なんで私は、叫んでるの?
顔が見えない、暗い。
なんで顔が見えないの?
『悪かったって』
そう言って、その人は私の肩に触れた。
『触らないで!?どういう神経してんのよ………』
『もう付いてこないでッ……』
『まって永田さんッ……!』
触れられた瞬間、力が抜けるように、パたりと倒れた。
『大きな音したけど、なんかあったか?……芹那?芹那、芹那ッ!!しっかりしろ、芹那!せりな!!』
『僕は何もしてないっ……』
『お前芹那に何したんだよ!』
『何も、何もしてない……う゛わ ぁぁあッッ!』
『芹那にもう近づくなよッ!芹那、芹那!』
遠い向こうで
誰かが私を呼ぶ声……。
忘れちゃいけない気がする……。
温かい体温に包まれて、意識が遠のいていく。
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