記憶を求めて、触れた優しさ。
お弁当箱
次の日の12時50分。
私はお弁当を作り終えて、着替えて家を出た。
薄いピンク色のブラウスにグレーのカーディガンと、黒のスキニーパンツ。
制服しか普段着ないけど、こういう格好が好き。
もちろんスカートも好き。
手作りお弁当なんて、自分以外に作るの初めて。
慣れていたのは、小学生の頃料理を覚えたくて猛練習した記憶が残っていたからか。
こういう記憶は消えないのかな。
「お待たせ、あ、ごめん待ったかな」
先に来ていた秀一に一言放つ。
秀一はブランコに乗って、キーキーと少し音を立てながらに芹那に話しかける。
「先に着いておきたかっただけだから、別にいいよ、気にしないで」
そういう優しさもあるんだ、知らないことばかりだ。
私は持ってきたレジャーシートを広げる。
「持ってきたんだ、ピクニックみたいでしょ」
少しひんやりとした風が吹いていた。
レジャーシートに風が当たって広げられない。
「ピクニックにしては、寒いけどな」
そう言いながら、いつの間にかブランコから降りていた秀一は、芹那の持つレジャーシートの反対側を持って手伝う。