まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 伯爵と父は顔を見合わせる。
 それから、子供達には、それぞれの母親の言うことをよく聞いておくようにと話をしてから父達は立ち上がった。
 応接間に通された院長とミケルは、緊張した面持ちだった。
 院長の衣服はアイロンをかけたようであるし、ミケルもずいぶん大きいが、昨日着ていたよりははるかにましな衣服を身に着けている。ミケルは顔色を青ざめさせながらも、毅然とこちらを見ていた。きゅっと引き結ばれた唇に、彼の決意が表れているみたいだ。

「……申し訳ございません、伯爵様。この子は盗みをしました」
「きのう、けむりだしたのこのこだよ、はくしゃく」
「……なんと!」

 昨日ミケルは、財布を盗んだのだが、その中には金貨が三枚と銀貨が五枚入っていたそうだ。
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