まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 市場を手伝ったぐらいで金貨を持ち帰るのは不自然だと、それは使わずに銀貨五枚だけ使って食材を買ったらしい。金貨の入ったままの財布を、院長は伯爵に差し出した。

「銀貨五枚は、なんとしてでもお返しいたします。ですからこの子――」
「いんちょうせんせい、ぼくきのういったでしょ? わるいことしたのはミケルでいんちょうせんせいじゃないよ」
「……わかってる」

 むっすりとした顔のままだったけれど、ミケルも口を開いた。
 自分のしでかしたことが、言い訳もできない悪いことであるときちんと理解しているらしい。

「……それで、テティウスよ。ここに伯爵を呼んだのはどういう理由だ?」
「うん。ぼくね、はくしゃくもよくないとおもうの。だって、いんちょうせんせいのところでくらしているこ、えいようがたりなくておなかすかせてた」
「しかし、市場ではふるまいを」
< 183 / 347 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop