まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 でなければ、とりあえず連れて階段を下りて、屋根のあるところに放置。
 いずれにしても、これだけ弱った状態では、この子猫の命は長くはなさそうだ。

(……どっちもないな)

 そして優人はその名が示す通り優しかった。優しいを通り越してお人よしだった。
 二十四歳になった今でも築二十年の庭付き一戸建ての実家暮らし。
 家族に猫アレルギーはいない。むしろ、猫を飼いたいと母が騒いでいる。
 連れて帰ったところで、「元いたところに戻してきなさい!」と、目を吊(つ)り上げて叱られる可能性は限りなく低い。
 いや、この際だから、反対されたら実家を出てしまえばいいか。
 どうせ、来年にはひとり暮らしをすると家族にも宣言済み。
 今から探せば、猫を飼ってもいいマンションを見つけることだってできるだろうし、それまでの間なら家に置いても許してくれるだろう。

「お前、家に来るか?」
「……みぃ」

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