まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 母は、悲鳴をこらえようとしているみたいに、両手で口を覆った。

(……母様に、こんな顔をさせるなんて)

 テティウスは、母の身体に身を寄せる。身体をこわばらせていたので、そっと両腕を回してみた。だが、それにも気づかないほど衝撃を受けているようだ。

「――父上! 僕も連れて行ってください」

 緊張の沈黙が続く中、最初に声をあげたのはゼファルスだった。現地で少しでも父の手助けをしたいという兄の気持ちは、テティウスにもわからなくはない。

「駄目だ。お前には、私が留守にしている間政務を見てもらわなくてはならない」

 現状、兄が任されている政務はさほど多くはないけれど、母と一緒にならばできることも増えるだろう。

「父上、それなら俺を連れて行ってほしい」
「駄目だ。お前には、妹と弟を守る役目を果たしてもらわなければ」

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