まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 その言葉が真実だったのだな、と今身を持って実感している。ナビーシャの身体に寄りかかるようにして、立ったまま眠りに落ちてしまった。

 * * *



 天幕の中はしんとしていた。
 もうすぐ、先に行った冒険者達と合流することになりそうだ――と、テントの外が不意に慌ただしくなった。
 横になって休んでいたダモクレスは勢いよく飛び起きた。素早く側に置いていた剣を手にしたのは、敵襲と思ってのことだった。

「ごめんなさーい、ちょっとお邪魔するわよ?」

 外界とテントの内側を隔てている布を前足で跳ねのけ、背中に子供を背負って軽やかな足取りで入ってきたのは翼を持つ黒猫だった。

「失礼いたしました、陛下、ナビーシャ様」

 外から護衛の騎士の声がする。
 いつもはテティウスの足元にいる子猫の姿なのだが、今は、子供を背負えるほどに大きい。護衛も、てっきり魔物の襲来と誤解したようだ。

< 243 / 347 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop