まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
第七章 呪いには素敵なお返しを
グルバルト王国では、先の王が退位し、王太子が新たな国王になったらしい。そんな話が聞こえてきたのは、季節が真冬に変わろうとする頃合いだった。

「さーむーいー!」

 テティウスは、暖炉の前に座り込んでいた。寒い、とにかく寒い。
 王宮は、魔術で温かく保たれているはずなのに、それでも寒い。
 フェンリル達のところに行く時使った魔道具は、王宮に戻るのと同時に速やかに返却するよう求められたので、もう手元にはない。

(……魔術を使えば、温かくはできるんだけどさ……!)

 自分一人温かくなるのも違う気がして、魔術を使うのはためらっている。
『いくらでも温かくすればいいのに』

 暖炉の前で喉をゴロゴロ言わせているナビーシャは、自分だけぽかぽかになるよう周囲の温度を調整しているようだ。彼女の毛並みは今日も艶々と輝いている。
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