まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 子供の頃、風邪を引いた時に飲まされたのは強い甘みのついたシロップ。それを思い出しながら、かなり甘めになるよう蜂蜜をたっぷり入れて調整した。

(子供達が、元気になりますように……!)

 そう願いをこめながら、頭の中に思い描く術式。
 テティウスの前に置かれていた鍋がまばゆく輝いた。スプーンを突っ込み、まず味見。
 蜂蜜の甘味にレモンの爽やかな酸味。何倍でも飲めてしまいそうだが――これは、子供用のシロップだ。

「これでだいじょうぶ。じょうかしたびんにいれてこどものいるしせつにくばって」

 一口飲ませれば、それでかなり病状はよくなるはずだ。
 テティウスの言葉に、使用人達が手際よく鍋の中身を瓶に移動させていく。まず配るのは、両親のいない子供達が暮らしている施設。
 次が、医師のところだ。診察料を払えない貧しい人にも、この水だけは無料で配るように伝えてもらう。
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