まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 姉達の手にもしっかりとココアのカップが握られている。アクィラが追加のマシュマロを焼き始め、また甘い香りがかまくらの中を満たした。

「そうそう。テティのおかげで街の呪いはおさまったって評判になってるの知ってた?」
「のろいなんてといてないよ?」
「テティの作った薬。あれ、よく効いた」
「あぁ……」

 ヘスティアの言葉で理解した。テティウスの作った薬が、呪いを解く聖水扱いになっているらしい。

「みんながげんきになったらよかったよ」

 テティウスからしてみれば、あれは呪いではなく質の悪い病気だ。だが、この国には、それを治すための手段が乏しかった。
 たまたまテティウスはそれを知っていただけのこと。たいしたことをしたわけじゃない。

「それでも、だよ。テティ、君の能力に皆が助けられているんだ」

 頭に置かれたゼファルスの手は、とても大きくて温かい。

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