まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ

 イヴェリアのことはともかく、彼女の兄のことまで気が回っていなかった。
 アクィラには、こういう気の回し方をするところがある。子供に大量の菓子を与えるのがいいか悪いかは別として、たしかに気はまぎれるかもしれない。伯爵夫人に渡しておこう。

「あと、僕からはこれ。いい香りがしたら喜んでくれると思うんだ」

 ゼファルスが抱えてきたのは、香りが弱い品種の薔薇を集めた花束だった。王宮の温室で育てられているものだ。
 食卓に飾るため、香りをおさえるように品種改良されたものだけれど、たしかに病人の枕元に飾るのならば香りは強すぎない方がいい。

「ありがとう。ゼフにいさま。きっとイヴちゃんもよろこんでくれる」

 柔らかなピンクや黄色を中心に選ばれた花束。
 温室を適温に保つには、大量の魔石が必要となる。この時期に薔薇を入手できるのは、よほどの資産家ぐらい。きっと喜んでくれる。

< 292 / 347 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop