まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
「テティ、着替えを入れておいたわ。もしかしたら、数日あちらに滞在するかもしれないし。温かくして行ってくるのよ」

 母から渡されたのは、肩掛け鞄の中にまとめられた荷物。渡された品々は、収納魔術の中に収納し、テティウスがまたがれるほどの大きさになったナビーシャに乗る。

「いってきます!」

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに周囲の景色が歪んだかと思うと、あっという間に違う景色へと切り替わる。到着したのは、伯爵家の庭だった。

「しょうめんげんかんにいこう」

 ナビーシャにまたがったまま、入口へと向かう。
 今の今まで温かな部屋にいたから、しっかり着こんでいても吹き付けてくる風は冷たい。

「――何者だ!」

 伯爵家に使える騎士達はよく訓練されているようだ。正面玄関の扉をたたく前に、誰何の声に止められた。

< 293 / 347 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop