まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 ぷりぷりとしながら、ナビーシャはテティウスの前に立って歩く。いつもとは違って、テティウスが乗れるほど大きなサイズのまま。
 ピンと立った尾が左右に揺れている。彼女は、何か感じ取っているらしい。

「……本当、空気が悪いわね」
「うん。イヴちゃんのようすをかくにんしたら、やしきのなかぜんぶじょうか、しておこうか」

 イヴェリアの様子を確認していないために、こちらにどれほどの力を避けるのかはわからないから様子見だ。
 バタバタと慌ただしく向こう側から走ってきたのは、この屋敷の主スピラー伯爵であった。
 そのあとから、伯爵夫人がスカートを持ち上げて走ってくる。貴族の女性が、スカートを持ち上げて走るなんて本来はあってはならない無作法だ。
 けれど、今はイヴェリアが心配でならないのだろう。

「――殿下! 来てくだったのですね!」
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