まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 父が先に立ち、あとからテティウスとナビーシャもついて歩く。階段を降りていくと、だんだんと周囲の空気がひんやりとしてきた。
 じめじめとした地下牢は、あまり居心地のいい場所ではない。今、牢に入れられているのは一人だけだそうで、父は迷わず奥へと向かう。

「陛下、どうかなさいましたか」
「囚人と話をしに来た。囚人はどうしている?」
「どうもこうも。何も話をしようとはしません。話をする元気もないのでしょうが」

 父に連れられて、なおも奥に進むと、そこが地下牢だった。くぐもった声と同時に、もそもそと動く音が聞こえてくる。

「――おい、こちらを向け」

 そう命じる父の声は、今までテティウスが聞いたことがないほど低いものだった。奥にいた男が、のろのろと視線を上げてこちらを見る。
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