まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 低い低い子供の声に、牢の中にいる男は肩を跳ね上げた。子供らしからぬ言葉の選び方、子供らしからぬ声音。

「イヴちゃんをあれだけくるしめたんだもの。まりょくでおじさんのゆびをはんたいほうこうにねじまげてぐりぐりひねりあげて、あしのこゆびをがんがんかどにぶつけてやって、えーとえーと……」

 指折り数えながら、続きをひねり出そうとするものの出てこなかった。前世でも今世でも、テティウスの間近に暴力は存在しなかったから。

「ええと、とにかく『もうゆるしてください』っておじさんがなくまでいたいめにあわせてからしんだらいいとおもいます――でも、それはしません」

 え? と驚いたように男は目を見開いた。それは、父も同じ。二人の前で、テティウスは指を振る。

「だって、それじゃあとあじわるいですからね。イヴちゃんもそれはいやだとおもいます――だから、おじさんにはだれがいらいしたかはいてもらいます」
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