まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
「……考えておこう」

 牢の前で、二人、顔を見合わせる。
 父の目は、テティウスが相手を拷問して殺さなかったことに安堵しているようだった。たしかにそうしてやりたいと思ったけれど、それをやってはいけないにもわかっている。

(大丈夫、僕はそんな道は選ばない)

 女神から、大きな力をもらったのは事実。その力をどう使うのかテティウスに任されているのも嘘ではない。
 今回の人生はまるっとおまけみたいなもの。好きなことしかしなくていいと言われたけれど、だからこそ、与えられた力の使い方には慎重でいたいと思うのだ。

「あしのうらがかゆいのだけはなおしてあげたけど、あとは、おじさんがはんせいしたとおもったらなおしてあげます」
「――おいっ! 話が違う!」

 男の声を背に、テティウスは牢から離れて歩き始めた。

(らしくないな……)

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