まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 父の前で、あまりにも子供らしからぬところを見せてしまった。こんなところを見せてしまったのには後悔が残る。
『王様もわかってるから、そんな顔をしないの』

 と、自己嫌悪に浸っていたら、背後から腕がにゅっと伸ばされ、そのまま高い位置で抱きかかえられた。

「――テティ」
「とうさま、ぼくのことをきらいにならないで」

 父の首にしがみついて、肩に顔を埋める。

「なるものか。おまえは、自慢の息子だよ。だがな、やっぱりまだ早かったんじゃないか? いい気はしなかっただろう?」
「それはそうだけど」

 相手が悪人であっても、脅迫するのはやっぱり向いていなかった。

(五歳児のすることじゃなかったな……)

 イヴェリアを傷つけた相手に対する怒りは大きかったけれど、やっぱりちょっとやりすぎた。
 こんなところを見せても愛してくれるのだと思ったら、なんだかほっとしてしまった。

 * * *


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