まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 ――それは寂しいと思う、けれど。
 彼らには彼らの生き方がある。王都を去るという彼らを止める権利は、テティウスにはない。
 よく知られた迷宮だし、さほど危険はないだろうとのんきに構えていたけれど、事態が大きく動いたのは、それから二日後のことだった。
王宮が不意に騒がしくなった。
 入れ替わり立ち替わり騎士達が駆け込んでくるのがテティウスとアクィラのいる部屋まで伝わってくる。

「回復魔術を使える者は、全員中庭に集合! 迷宮の入口に向かう!」

 そう叫ぶ声が聞こえてくる。
 王家の子供達は、一室に集まって時間を過ごしていたが、外から聞こえてきたその声に勢いよく立ち上がったのはゼファルスだった。

「――ゼフにいさま?」

 テティウスが驚愕の声をあげたのも当然。
 いつもは行儀のいい長男が、窓を開いて飛び降りてしまったのだ。なんで、そこから飛び降りたのかまったくわからない。

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