まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 ナビーシャの背中から滑り降りるようにして、近づく。ネレアの肩を借りているレナータは、右腕の肩から先を失っていた。

「テティ様……私は、不覚をとってしまったみたいだ……もう、冒険者としては働けないだろうね」

 苦痛に眉を寄せながらも、レナータは笑みを作ってみせた。痛みに歪んでいたけれど、彼女は確かに笑っていた。テティウスを脅えさせまいとしているみたいに。
 テティウスは涙がにじみそうになるのを、懸命に押し殺した。
 こんなところで泣いては駄目だ。泣くためにここに来たわけじゃない。
 重傷者は多数出ているようだけれど、まだ、死者はいないみたいだ。生きているなら、なんとかできる。
 パチンと両手で頬を叩いて気合を入れる。大丈夫、できる。いや、やらなくてはならない。 

「……ナビ子しゃん! 迷宮のいりぐちにけっかい!まものがでてこられないようにして!」
「オッケー、まっかせなさい!」
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