まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
「おはな、くだしゃい。あっちにいく」
「かしこまりました」

 テティウスが指で示した方向を見て、庭師は花を求められた理由を理解した。
 王宮の奥には、祠(ほこら)があるのだ。そこに奉られているのは、テティウスをこの世界に転生させてくれた創世の女神アスタナである。
 優人の人生に大量の不幸を呼びこんでしまったドジッ子神様ではあるが、今の人生を与えてくれた恩人でもある。

(……次に会う時は別の姿がいいなあ)

『どうかしら。意外とあの姿気に入っているみたいだし』

(……ぐぅ)

 たしかに、好きなタイプではあったが、元彼女とそっくりの顔というのはいろいろやりにくい。

「殿下、お花はこちらでよろしいですか?」
「ありがとぉ」
「どういたしまして。お気をつけて」

 夏の青空に似合うヒマワリを切ってもらい、それを抱えて王宮の奥にある祠へと向かう。
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